2020年11月で、ちょうど没後50年となった日本を代表する作家・三島由紀夫。
執筆した小説などの作品は、数多く映画化。
文学や読書になじみのない一般の人々の間でも、広く人気を博しました。
ここでは三島由紀夫の原作・および出演した映画、特に今でも観られる作品について年表で紹介。
あわせて、現在でも視聴可能な配信サイトなどについても見ていきます。
三島由紀夫原作・出演の映画【年表】
三島由紀夫の原作による映画、また原作は別の人でも三島本人が出演した映画について、それぞれ年表で見ていきます。
三島由紀夫原作の映画
映画化された三島由紀夫の作品を、原作が発表された順に見ていきます。
なお、映画版で本人が出演しているのものには、タイトルに★を付してあります。
タイトル | 原作発表年 | 内容 | 主な出演 |
---|---|---|---|
純白の夜★ | 1950(昭和25)年 | 雑誌『婦人公論』に連載された恋愛小説。 作者も「ダンスの客」として出演 | 木暮実千代 |
愛の渇き | 〃 | 若い園丁に惹かれる女の情念を描いた作品 | 浅丘ルリ子 |
夏子の冒険 | 1951(昭和26)年 | お嬢様の熊退治を描いたコミカルな作品 | 角梨枝子 |
につぽん製 | 1952(昭和27)年 | 『朝日新聞』連載。対照的な男女の恋愛模様 | 山本富士子 |
潮騒 | 1954(昭和29)年 | ベストセラーとなり、過去に5度の映画化。 若く純朴な漁師と海女の、素朴な純愛物語 | 三浦友和 山口百恵 |
幸福号出帆 | 1955(昭和30)年 | 『読売新聞』連載。異父兄妹の純愛が描かれる | 藤真利子 |
金閣寺 | 1956(昭和31)年 | 三島を世界に知らしめた近代日本文学の傑作 | 市川雷蔵 |
永すぎた春 | 〃 | 『金閣寺』とは正反対の明るい青春恋愛小説 | 若尾文子 |
鹿鳴館 | 〃 | 華族の陰謀・愛憎渦巻くドラマチックな戯曲 | 菅原文太 |
美徳の よろめき | 1957(昭和32)年 | 「よろめき」が流行語となった人妻姦通小説 | 月丘夢路 |
不道徳 教育講座★ | 1958(昭和33)年 | 『週刊明星』連載の機知・逆説に富んだエッセイ。 作者がナビゲーター役で出演 | 大坂志郎 |
お嬢さん | 1960(昭和35)年 | うぶな女子大生が奥さんとして成長する物語 | 若尾文子 |
愛の処刑 | 〃 | 切腹死が描かれた、『憂国』にも通ずる作品 | 御木平介 |
憂国★ | 1961(昭和36)年 | 死とエロティシズムが濃密に描かれた三島の代表作。 本人主演 | 三島由紀夫 鶴岡淑子 |
獣の戯れ | 〃 | 3人の男女の奇妙な愛と共同生活を描いた作品 | 若尾文子 |
黒蜥蜴★ | 〃 | 江戸川乱歩の探偵小説を戯曲化&2度映画化。 丸山(美輪)明宏主演版では「生人形」役で作者出演 | 京マチ子 大木実 |
美しい星 | 1962(昭和37)年 | 三島文学では異色の、SF要素が含まれた長編。 作者自身、非常に愛着を持っていた小説 | リリー・ フランキー |
肉体の学校 | 1963(昭和38)年 | 元華族の女性たちによる貪欲な恋愛物語 | 岸田今日子 |
午後の曳航 | 〃 | 未亡人とその息子、若い船員の人間模様 | サラ・ マイルズ |
剣 | 〃 | 大学の剣道部での人間模様を描いた短編小説 | 市川雷蔵 |
音楽 | 1964(昭和39)年 | 不感症に悩む女性の深層心理を探る長編小説 | 黒沢のり子 |
春の雪 | 1965(昭和40)年 | 華族の幼なじみの美男美女が織りなす悲恋物語。 最後の長編小説『豊饒の海』第一巻 | 妻夫木聡 竹内結子 |
複雑な彼 | 1966(昭和41)年 | 作家・安部譲二がモデルとなった娯楽的恋愛小説 | 田宮二郎 |
三島由紀夫出演の映画
ここでは、上記の三島由紀夫原作の作品を除いた、三島本人が出演した映画を見ていきます。
タイトル | 劇場公開年 | 内容 | 主な出演 |
---|---|---|---|
からっ風野郎 | 1960(昭和35)年 | 映画俳優として初主演。 出所後、命を狙われる二代目ヤクザを演じる | 若尾文子 |
人斬り | 1969(昭和44)年 | 薩摩藩士の暗殺者役で登場する時代劇。 仲代達矢・石原裕次郎など豪華キャスト | 勝新太郎 |
三島由紀夫vs 東大全共闘 50年目の真実 | 2020(令和2)年 | 1969年5月に東大で行われた、学生との討論会の 映像を収めたドキュメンタリー映画 | 芥正彦 |
三島由紀夫原作・出演のおすすめ映画
ここでは、DVDや動画配信サービスなどで現在でも視聴しやすい作品の中から、三島由紀夫原作・出演のおすすめ映画を紹介していきます。
愛の渇き
- 公開 : 1967(昭和42)年2月18日
- 監督 : 蔵原惟繕
- 音楽 : 黛敏郎
- 出演 : 浅丘ルリ子(主演)・山内明・楠侑子・中村伸郎・小園蓉子・志波順香・石立鉄男ほか
モノクロ作品。嫉妬の苦しみに苛まれた女の奇怪な情念を描く。
三島自身も、「私の小説の見事な映画化であり、浅丘ルリ子が素晴らしい」と高評価。
潮騒
過去に5度映画化されていますが、ここでは第2作(1964年)・第4作(1975年)を紹介します。
「三浦友和&山口百恵」版の方が観やすくはあるけど、「浜田光夫&吉永小百合」版はより素朴な感じがして、原作のイメージに合ってるかも、といった感じですね。
潮騒(1964年版)
- 公開 : 1964年(昭和39)年4月29日
- 監督 : 森永健次郎
- 音楽 : 中林淳誠
- 出演 : 浜田光夫&吉永小百合・石山健二郎・清川虹子・平田大三郎・松尾嘉代ほか
潮騒(1975年版)
- 公開 : 1975年(昭和50年)4月26日
- 監督 : 西河克己
- 音楽 : 穂口雄右
- 出演 : 三浦友和&山口百恵・初井言栄・亀田秀紀・津島恵子・石坂浩二ほか
金閣寺
これまでに3度、映画化されています。
ここでは第1作(タイトルは『炎上』)・第2作を紹介します。
『炎上』はモノクロ、後発の1976年版はカラー作品ですね。
炎上
- 公開 : 1958年(昭和33)年8月19日
- 監督 : 市川崑
- 音楽 : 黛敏郎、中本利生
- 出演 : 市川雷蔵(主演)・仲代達矢・中村鴈治郎・北林谷栄・舟木洋一・浜村純・中村玉緒ほか
金閣寺(1976年版)
- 公開 : 1976年(昭和51)年7月17日
- 監督 : 高林陽一
- 出演 : 篠田三郎(主演)・柴俊夫・横光勝彦・市原悦子・加賀まりこ・島村芳江ほか
永すぎた春
- 公開 : 1957年(昭和32)年5月28日
- 監督 : 田中重雄
- 音楽 : 古関裕而
- 出演 : 若尾文子(主演)・川口浩・船越英二・花布辰男・滝花久子・見明凡太朗ほか
雑誌『婦人俱楽部』連載の軽妙な恋愛小説を映画化。
婚約期間の長い恋人の倦怠や波乱を指す「永すぎた春」という言葉は、当時の流行語となりました。
お嬢さん
- 公開 : 1961年(昭和36)年2月15日
- 監督 : 弓削太郎
- 音楽 : 池野成
- 出演 : 若尾文子(主演)・川口浩・野添ひとみ・田宮二郎・清水将夫・三宅邦子・中田康子ほか
三島が若尾に、次の小説としてこの『お嬢さん』の構想を話したところ、若尾が「私、(ヒロインの)かすみの役をやりたいわ」と申し出て主演が決まったとか。
若尾はこの撮影で自分が着る衣裳22点をデザイン。この衣裳は「若尾ちゃんの『お嬢さん』モード」と呼ばれ、人気となりました。
憂国
- 公開 : 1966年(昭和41)年4月12日
- 監督 : 三島由紀夫
- 出演 : 三島由紀夫(主演)・鶴岡淑子
28分のモノクロ作品。音楽はドイツの作曲家ワグナーの『トリスタンとイゾルデ』。
能を思わせる舞台で演じられる、静かなエロスと死の儀式。
割腹シーンがあるので閲覧注意。
獣の戯れ
- 公開 : 1964年(昭和39)年5月23日
- 監督 : 富本壮吉
- 音楽 : 入野喜朗
- 出演 : 若尾文子(主演)・河津清三郎・伊藤孝雄・三島雅夫・星ひかる・中条静夫ほか
モノクロ作品。
扇情的なタイトルとは裏腹に、西伊豆の豊かな自然や花を背景として、高雅なタッチで描かれた静寂感が漂う物語。
黒蜥蜴
過去に2回映画化。
丸山(美輪)明宏&三島出演の1968(昭和43)年版は、過去にVHS版はあったものの、今のところDVDや動画配信等では観られないようです。
黒蜥蜴(1962年版)
- 公開 : 1962年(昭和37)年3月14日
- 監督 : 井上梅次
- 音楽 : 黛敏郎
- 出演 : 京マチ子(主演)・大木実・川口浩・叶順子・三島雅夫・目黒幸子・緋桜陽子ほか
カラー作品のミュージカル映画。
京マチ子の色気と軽やかな演技が光り、オシャレで遊び心が詰まった愉快な作品。
美しい星
- 公開 : 2017(平成29)年5月26日
- 監督 : 吉田大八
- 音楽 : 渡邊琢磨
- 出演 : リリー・フランキー(主演)・亀梨和也・橋本愛・中島朋子・佐々木蔵之介ほか
つい数年前に映画化。キャストも馴染みがある俳優ばかりで、現代に三島文学の世界を再現。
映画版では原作から時代設定を変更し、核戦争の危機を「地球温暖化」に置き換えるなど、大幅な脚色が施されています。
(※本ページの情報は2020年11月時点のものです。最新の配信状況はU-NEXTサイトにてご確認ください。)
午後の曳航
- 公開 : 1976(昭和51)年8月
- 監督 : ルイス・ジョン・カルリーノ
- 音楽 : ジョン・マンデル
- 出演 : サラ・マイルズ、クリス・クリストファーソン、ジョナサン・カーンほか
日米英による合作。
英国が舞台で、登場人物は全て外国人に置き換えられているものの、内容は極めて原作に忠実。
剣
- 公開 : 1964年(昭和39)年3月14日
- 監督 : 三隅研次
- 音楽 : 池野成
- 出演 : 市川雷蔵(主演)・長谷川明男・藤由紀子・川津祐介・紺野ユカ・稲葉義男ほか
雑誌に掲載された小説を市川雷蔵が読んで、自ら映画化を希望したとか。
原作にはいない、女性の登場人物が加えられています。
音楽
- 公開 : 1972年(昭和47)年11月11日
- 監督 : 増村保造
- 音楽 : 林光
- 出演 : 黒沢のり子・細川俊之・森次浩司・高橋長英・森秋子・藤田みどり・三谷昇・松川勉
成人映画指定。人間の精神や性における謎を、サスペンスタッチで鋭く描いた作品。
映画化した理由について監督の増村保造は、「この小説が愛とセックスを見つめる新しい視点と角度を与えてくれると考えたから」としています。
春の雪
- 公開 : 2005(平成17)年10月29日
- 監督 : 行定勲
- 音楽 : 岩代太郎
- 出演 : 妻夫木聡&竹内結子・高岡蒼佑・及川光博・宮崎美子・岸田今日子・若尾文子ほか
旬の人気俳優二人を起用し、甘いラブロマンスに仕上がっています。
三島作品に数多く登場した若尾文子が、久しぶりの映画出演。
複雑な彼
- 公開 : 1966年(昭和41)年6月22日
- 監督 : 島耕二
- 音楽 : 大森盛太郎
- 出演 : 田宮二郎・高毬子・佐野周二・中村伸郎・若山弦蔵・滝瑛子・渚まゆみほか
ブラジル・リオデジャネイロでロケを敢行。
原作のモデルとなった作家・安部譲二は、
「『複雑な彼』は、私の二十七歳までの半生記で、背中に彫物が……等の細部を除けば、なんとも私が生きて来た事実そのままです」と、文庫版の解説に記しています。
まとめ
以上、三島由紀夫原作の映画、さらに今でも視聴可能なおすすめ作品について詳しく見てきました。
明るい青春恋愛映画からドロドロの情念を描いた映画、コミカルな冒険ものもあれば格調高い芸術作品まで、原作同様、幅広いジャンルの映画が揃っていますね。
個人的には原作を読んでから映画版を観たい所だけど、気楽に映画をあれこれ観て、興味を持った作品の原作を手に取るという三島作品の愉しみ方も、また良いかもですね。
三島由紀夫について改めて知りたい方は、こちらをどうぞ。
三島を初めて知る人におすすめの、本・映画についてはこちら。