坂本龍一『ぼくはあと何回、満月を見るだろう』感想

2023年6月発売、世界的な音楽家・坂本龍一さんの自伝本『ぼくはあと何回、満月を見るだろう』を読んだ。

 

亡くなったのは、2023年3月28日。

2009年発売された自伝本『音楽は自由にする』以降から、亡くなる直前までの日々が綴られている。

 

2014年に初めてガンと診断され、体調が万全でない中での仕事の様子。

父・一亀氏と母・敬子さんの死。

敬子さんについてはあまり今まで知らなかったので、坂本さんの母親の人となりについて少しでも知りえたのは良かった。

 

現在のパートナーと息子さんについて。

亡くなるまで随分と長く連れ添っていたマネージャー兼パートナーの空里香(そらの りか)さんは、結構しっかりした感じの人らしい。

還暦を過ぎ、これまでとは違ってきた音楽に対する関わり方。 

よりアンビエント・環境音楽的な方向に向かっていったけど、ガンという死を意識せざるを得ない病気にかかったことももちろん影響してるのだろう。

 

前から知ってたけど「ピアノの練習は大嫌い」だとか。

ピアノのウマ下手は分からないけど、それでも若い頃の演奏を聴くとやっぱり素晴らしいと思う。

音楽を創ることに関しての天賦の才能はもちろん、演奏においてもそういった天性のものを持ち合わせていたのだろうか。

 

とりわけ印象的だったのは、美術・文学・哲学・映画等々、音楽だけにとどまらない作者の広範な知識量。

そして、世界を飛び回り、知らない土地や人々に出会おうとする好奇心やエネルギッシュさ。

 

YMOのメンバーでもある坂本氏の盟友・高橋幸宏さんが1月に亡くなった時もショックだったが、坂本さんの死はまるで自分の中の一部が欠けたような空虚感を感じ、死から半年が過ぎてもその感じは続いてるような気がする。

 

正直、21世紀になってからの坂本さんの音楽はあまりに「枯れた」感じがしてあまり好きになれなかったけど、これからも彼が遺した膨大な楽曲をじっくり聴いていきたいと思う。

 

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